盛岡市認定ロールモデル企業

都市と地方を、かきまぜる。

Story

1. 企業のストーリー

雨風太陽は、東日本大震災をきっかけに生まれました。当時、岩手県議会議員だった私は、それまで交わることのなかった都市の消費者(支援者)と地方の生産者(被災者)が被災地で初めて出会い、お互いを知り、活動を共にするにつれ、関係性が深まっていく様子を目にしました。東北の農漁村は、震災前から過疎・高齢化で衰退していました。食べものをつくっている生産者自身が食べていけない、後継者がいない、耕作放棄地が広がる、鳥獣被害が増える、気候変動が猛威を振るう…
ボランティアとして被災地に訪れた都市の消費者は、そのような地方の生産現場の実態に心を痛め、食べものの裏側にいた生産者の哲学や生き様に共感したことで、継続的な復興支援に参加していきました。一方で、東北の豊かな自然に触れ、目の前の困っている人を助け感謝されることで、都市生活では得にくかった生きる実感ややりがいを得て、支援に来たはずの彼らが逆に被災者から救われる場面も数多く見られました。
困っていたのは地方だけでなく、生かし生かされ合っている自然や人間とのつながりが希薄になり、生きる実感を失っていた都市もまた、同じだったのです。このとき、消費者と生産者がもう一度関係性を紡ぎ直すことで、「疲弊する都市」と「衰退する地方」の双方が抱える課題を同時に解決できるはずだと確信しました。

Vision

2. 創業のビジョン

当社では「都市と地方をかきまぜる」というミッションと「日本中あらゆる場の可能性を花開かせる」をビジョンに定め、全国の生産者を媒介に、都市と地方をつなぐことで地域を持続可能にし、将来にわたって活力ある日本社会を残したいと考えています。
今、日本では都市と地方、生産者と消費者、そして人間と自然とのつながりが分断され、本来支え合っているはずのお互いの顔が見えなくなっています。
私たちの使命は、都市と地方をかきまぜ、場所と場所、人と人とをつなげて、境目をなくすこと。生かし、生かされあう関係を実感することで、感謝や喜びを感じられる社会を作ることです。その先には、日本中のあらゆる可能性が開花し、自然・歴史・風土が織りなす百花繚乱の景色が広がると信じています。

Business

3. ビジネスモデル

当社が目指すのは「関係人口」の創出で都市と地方をつなぐこと。 「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉で、私が考案した概念です。2016年に自著『都市と地方をかきまぜる』の中で、国内で初めて刊行物にて発表しました。現在では地方創生の看板政策となり、国土交通省、総務省、農林水産省、文部科学省、内閣府など省庁横断で関係人口の創出に取り組んでいます。
関係人口は都市に「地方や自然に関わりをもつ豊かな生活」を、地方に「都市から多様な人がやってきて持続可能な田舎に」なることをもたらすという考えのもと、産直EC「ポケットマルシェ」や「ポケマル親子地方留学」など、「関係人口」の創出を目指した事業を拡大しています。

Team

4. 組織文化とチームの魅力

当社は行動指針として、「1.社会の答えになる」「2.できる方法を考える」「3.かきまぜる」の3つを定めています。答えを探すのではなく、ビジョンを社会の答えにする気構えを持つ。そのために、できない理由ではなく、 できる方法を考える。ひとりでは無理でも、関わりの力で必ず乗り越えられる。これらの考えのもとで業務を行っています。  

Impact

5. 社会への貢献とインパクト

当社では、“関係人口の創出”をインパクトとして捉え、2050年までに“2,000万人の関係人口の創出“を目指しています。 人口減少が続く日本社会において、2022年に1億2,600万人いた人口は、2050年には2,000万人減少し、1億500万人になると考えられています。人口の減少は、地方に大きな影響を与えます。働き手の減少や都市圏への人材の流出が続けば、その地域の活力を失うだけではなく、魅力ある自然・歴史・文化までもが失われてしまう恐れがあります。
そこで鍵になるのが、関係人口であると、当社は考えます。地方と関わる人が増え、都市からの人の往来が増えれば、経済活動は活性化し、その地域は持続可能に近づきます。
現在、国土交通省の統計によると、三大都市圏に住む約4,678万人の18.4%にあたる861万人が、地域と継続的にかかわりを持つ関係人口とされ、その経済効果は年間約3兆483億円と試算されています。当社が目指す、「2050年に全人口の約20%にあたる2,000万人が関係人口となる」ことで、期待される経済効果は約7兆808億円。 また、関係人口の創出目標を達成するために、中期的な目標として、ふるさと住民登録制度の登録人数目標を新たに定めました。中期的な目標値として、『経済財政運営と改革の基本方針 2025』で掲げられた関係人口の目標値(1,000万人/年、10年で延べ1億人)の20%に当社が関与すべく、「年間で200万人、 10年で延べ2,000万人のふるさと住民登録」を目指します。魅力ある地方を、そして、多様な日本社会を残すために、当社は関係人口の創出に取り組んでいきます。

Yell

6. スタートアップ企業へのエール

小学校しか出ていないのに、パナソニックホールディングスを一代で築き上げた経営の神様、松下幸之助は「成功の要諦は成功するまで続けることである」という言葉を残しています。東芝社長として日本経済団体連合会第4代会長に就任し、国鉄の民営化という大仕事を成し遂げた土光敏夫は「どうにかできないのは能力の限界ではなく執念の欠如である」という言葉を残しています。
要するに、ふたりとも、諦めたら負け、と言っています。私は12年前の起業後、このふたりの先人の金言を胸に、一心不乱にここまで走り続けてきました。諦めないために必要なものは何か。それは、これを成し遂げたいという強靭な意思,WILLです。HOW(事業)はそのWILLを成し遂げるために必要な手段に過ぎません。ですから、とにかくそのWILLを研ぎ澄まし、打ち立てることが大事です。それができれば、自ずと道は開かれます。

Partner

7. パートナーシップとネットワークの力

当社の関係人口部門では「雨風太陽が都市と地方をかきまぜるHUBとなり、双方のニーズを把握し、相談に応じる信頼される存在となり、体験機会を提供するための仕組みを、行政・企業と共に共創すること」を目指しています。 その上で、「STEP1:都市にいながら地域とつながりをもつ」「STEP2:実際に訪問して日常を体験する」「STEP3:継続的に関わり関係性を深める」「STEP4:移住定住を具体的に考える」という、関係人口のステップに応じて、自治体や企業とともに都市と地方がかきまざる仕組みの共創や事業実施を行い、地域での自走化まで伴走を行っています。

Funds

8. 資金調達の秘訣

当社は東日本大震災をきっかけに生まれた会社です。2011年当時、東日本大震災の被災地で復旧・復興に関わる中で、NPO法人「東北開墾」を立ち上げ、“都市と地方の分断”という社会課題に対し、食を介して“都市と地方をかきまぜる”ことでその解決を目指してきました。2016年には、取り組みをさらにスケールさせ、課題解決のスピードを上げるために、株式会社ポケットマルシェを設立し、日本初の産直プラットフォーム「ポケットマルシェ」を開始。その後、資金調達を重ねながら、2022年4月には「株式会社雨風太陽」に社名変更し、生産者のもとで自然に触れる「親子向け地方留学事業」を開始、食以外の領域にも本格的に参入しました。2023年12月には東京証券取引所グロース市場へ上場し、社会性と経済性の双方を追求する道を選択しています。 現代の社会課題は多様化し、もはや社会課題の解決は政治や行政だけが担う時代ではありません。
社会課題の解決を成長のエンジンにするスタートアップがどんどん生まれていかなければなりません。”都市と地方の分断”という社会課題を解決する企業として、創業以来支えてくださった全てのステークホルダーの皆さまのご支援があり、今の会社があると考えています。
 

Reason

10. 岩手県、盛岡市への想いやロールモデル企業を引き受けた理由

私は岩手県花巻市出身です。高校卒業後、進学のために上京し、10年後に政治家を志して帰郷しました。それから岩手県議を2期務め、東日本大震災後には岩手県知事選挙にも挑戦させてもらいました。今は手段を政治から事業に変えましたが、岩手のような魅力ある地方をよくしたいという目的はあのころと何も変わっていません。

事業を始めて12年で全国を8周しました。そこで感じたのは、岩手県は圧倒的に人がいい、人がやさしいということです。手前味噌ですが、僕も人が良すぎてよく人に騙されてしまいますが、岩手には人に騙されても人を騙す人は少ないと感じています。その人のよさは歴史的にも証明されていて、かつて我々の先祖たちは義理で一藩をつぶしました。

戊辰のころ、仙台藩と米沢藩に誘われて「奥羽列藩同盟」に加わり、会津藩を守って薩長に抵抗しようとしました。しかし、薩長が優勢になると、この同盟の主動者だった仙台藩と米沢藩はいち早く薩長に寝返ったにも関わらず、南部藩は愚直に同盟を信じて大いに戦ったがゆえに、会津と共に賊軍とされて維新後は罰せられ、極端に貧窮に陥りました。

このまっすぐさとやさしさは、岩手県が誇るべき精神であり、その血が流れている私たちにも受け継がれています。だからこそ、岩手県は社会課題に苦しむ人々を救うローカルゼブラ企業が集積する地となるポテンシャルを秘めていると思います。雨風太陽はその先陣を切りました。続くローカルゼブラ企業が続々と現れることを期待しています。

高橋博之

株式会社雨風太陽 代表取締役社長

1974年、岩手県花巻市生まれ。青山学院大卒。代議士秘書等を経て、2006年岩手県議会議員に初当選。翌年の選挙では2期連続のトップ当選。震災後、復興の最前線に立つため岩手県知事選に出馬するも次点で落選、政界引退。2013年NPO法人東北開墾を立ち上げ、地方の生産者と都市の消費者をつなぐ、世界初の食べもの付き情報誌「東北食べる通信」を創刊し、編集長に就任。2015年当社設立、代表取締役に就任。2023年12月、日本で初めてNPOとして創業した企業が上場を実現するインパクトIPOとして、東京証券取引所グロース市場へ株式を上場。2024年11月には、内閣官房 新しい地方経済・生活環境創生本部が開催する「新しい地方経済・生活環境創生会議」の有識者構成員に、2025年6月には一般社団法人日本ファームステイ協会理事に就任。
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